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公正証書のよくある誤解

お子さんを抱えて、離婚を考えていらっしゃる女性の中には、
「公正証書さえ作れば、さも安心」
という認識があることが少なくありません。

そこで、このページでは、
強制執行できない公正証書にありがちな「3つの過ち」
について、ご説明しております。

離婚公正証書を作成しても100%の支払が約束されるわけでないが

あまり知られていないことですが、裁判を戦って得た判決等はもとより、公正証書を作成しておいても、養育費が支払われないという由々しき事態が起きていることは厳然たる事実です。

厚生労働省による調査結果報告書※1によれば、母子家庭の本来受け取るべき方々のうち、4人に3人は現在も受け取っていないということですから、これは大変な問題だと、私、行政書士高橋は考えています。

※1出典:厚生労働省による平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告

公正証書で取り決めた約束が守られているのは、45%(調停離婚では、さらに悪化し28%)※2

※2出典:厚生労働省所管の独立行政法人福祉医療機構が採択した母子家庭支援NPO法人による調査事業結果・平成18年度



未払のひとつの原因として考えられ得るのは、強制執行できない公正証書が存在していることです。

なぜ、このような事態が起きているのでしょうか。

強制執行できない公正証書にありがちな「3つの過ち」

  • 【1】  公正証書さえ作っておけば強制執行できるという誤った認識があること

法律上、公正証書が執行力を有するための要件は、以下のように規定されています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
債務者直ちに
強制執行に服する旨の陳述が記載されている
(民事執行法22条1項5号)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

下線部の「直ちに」は、
「不履行があれば、直ちに」
という意味に解されます


「支払義務者」のことを言う。対して、「支払え」と要求できる権利を有している者のことを、「債権者」という。

更に噛み砕いて申し上げると、
公正証書を使って強制執行するための最低限の要件は、以下の一文(「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」という)が、公正証書に明記されていることが絶対の条件です。

(例)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
甲は本契約に規定する金銭債務の支払を
履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しかしながら、たとえば、上記の「金銭債務」という書き方は、当事者の方に誤った理解(たとえば、お金の支払いの取り決めはすべて強制執行の対象となる等)をさせてしまうおそれがあります。

ですが、実際には、強制執行認諾文言の記載があったとしても、すべてのお金の取り決めが、強制執行の対象外であるということは、よくあることです。


強制執行認諾文言を明記しておくことは、公正証書を使って強制執行できるための、一つの要件に過ぎません。ですから、たとえ強制執行認諾文言が明記されていても、強制執行できない場合も当然ながらあり得ます。それ以前に公正証書の内容如何によっては、たとえ、公正証書であっても、強制執行認諾文言の明記を認められない場合もあり得ます。

  • 【2】 文言(接続詞・文章の語尾・句読点の位置・言葉の定義付けなど)が曖昧で明確でないため、解釈の余地が生じていること


公正証書に書かれている言葉の微妙な言い回しの違いによって、強制執行まで時間がかかったり、そもそも、強制執行ができなかったり、といった場合があります。法的な効力が生じるかどうかは、「裁判官が判断可能な条項か」という点が判断基準になります。しかしながら、すでに作成された公正証書を拝見すると、法的な効力は生じないと思われるものも、あります。

 その公正証書は法的有効性に疑問はないか


ここで、実際にあった、以下をケーススタディとして、考えてみたいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
甲及び乙は本契約に関し紛争が生じたときは、
中間地点の裁判所を管轄裁判所とすることに合意した
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(趣旨は、離婚後、何かあったときに、どこで裁判を行うかという「合意管轄」だと思われます)

この場合、「中間地点の裁判所とする」といった、特定の裁判所を明示しない管轄規定は、裁判官が管轄の有無を判断できませんので、管轄合意としての効力は生じないと考えられます。

「中間地点」という決め方だと、距離の中間なのか、所要時間の中間なのか、都道府県が中間であればよいのか、裁判所自体が中間になければならないのか、などが問題になろうか、と思われます。

さらに詳しくはこちらから>>元裁判官 弁護士が語る公正証書の重要性と知られざる実態

  • 【3】 受付する公証役場によっては、依頼者の意図に沿った文章にしてくれるわけではないこと


あまり知られていないことですが、どの公証役場で手続きをしてされたか、その選択によって、強制執行できるかどうか左右されてしまう場合があります。すなわち、どの公証役場で手続きをするかに、細心の注意をはらうことが極めて重要です。その選択を誤れば、強制執行できない事態が起こり得る可能性があると言えます。


ですから、「自宅から近い」「勤務先から近い」公証役場の選択が必ずしもベターとは限りません。

公正証書作成において「管轄」はありません。ですので、北海道在住の依頼者の方に、東京都内の公証役場までご足労いただき、離婚公正証書を作成したケースも実際にあります。

詳しくはこちらから>>公正証書が執行力(=強制執行できる)をもつために、乗り越えなくてはならない「6つのハードル」とは

反対に、上記の「6つのハードル」を乗り越えないと、執行力を有しない公正証(=強制執行できない公正証書)になります。



「強制執行の要件」を完璧に充たした離婚公正証書があれば「4つの安心」が手に入る

  • (1)公正証書は裁判で確定した「判決」と同じ効果があります。ですから、民事訴訟等を提訴し、裁判所から判決を得なくても、元夫の意思とは無関係に、給与などの財産を差し押さえる(強制執行)ことが可能です。

  • (2)公正証書は「公文書」であり、証拠力が高いため、事実上、紛争の蒸し返しを防ぎます。

  • (3)公正証書は原本が公証役場に保管されているため、万が一、紛失した場合、再交付が可能です。ですから、公正証書を紛失したからといって、強制執行できなくなるわけでありません。

  • (4)給与や預金が「差し押さえられる」と信用失墜のリスクが高いです。 (勤務先の会社、融資を受けている銀行や、取引先等から)

    ですから、「支払いが遅れれば差し押さえされる」と心理的に強制力が働き、結果的に、任意の支払いが期待できます。


当事務所では、捺印前に不安になった方からのご依頼で、他所で作成された公正証書の確認や、必要に応じて作り直しも多くお受けしております。
取り返しのつかないことになる前に、ご不安なことがあれば、当事務所にご相談ください。

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